第11話 自転車通勤、勤務先にも賠償責任が…
近年、マイカー通勤や自転車通勤を認める会社が増えているようです。
本来、就業規則などで禁止されていることが通例なので、コロナ禍での一時的な事であると思われます。
そこで“自転車通勤”による賠償事故ですが、勤務先にも賠償責任が及ぶことはあまり認識されていないようです。
通勤途上でのケガが労災認定されるように、通勤も勤務中と同じであり、合理的な経路を安全かつ速やかに通勤することが望まれています。
従業員個人が充分な保険に加入されていれば問題はないのですが、無保険で賠償能力が無い場合には被害者も訴訟せざるを得ません。
民法に規定されている使用者責任(第715条)を根拠に、被告として、従業員ならびに勤務先へ損害賠償請求を行ってくる可能性があります。
1.従業員としての対策
- 1)法令を遵守し、安全を最大限に心掛ける事。
- 2)通称:自転車保険に十分な額で加入すること。
2.勤務先の対策
- 1)就業規則等で、自転車通勤は原則禁止とする。
- 2)特例として認める場合は、申請制とし保険加入を確認のうえ許可する。
- 3)交通ルールの指導確認ならびに自転車の整備についても指導が必要(此処が肝心)。
就業規則には禁止されているにも関わらず、無断で自転車通勤してくる場合は、服務規律違反になります。
しかし、恒常的に会社の敷地に駐輪しているにも拘らず、何ら指導を行っていなかった場合には、黙認していたと判断され、勤務先は認めていたことと同じになってしまいます。
3.隠れ自転車通勤
また弊社では“隠れ自転車通勤”と命名していますが、自宅から最寄りの駅まで自転車を利用し、この後は電車通勤している場合。
- 例1)毎朝バスは混みあってるので、最寄り駅まで自転車で。
- 例2)子供を保育園まで自転車で送り、そのまま最寄り駅まで自転車で。
これらのケースは、勤務先に発覚しにくいので会社側は要注意です。
事故後の現場検証時に「出勤途中で…」と供述すれば、名刺をお渡しして、勤務先も述べなければならないでしょう。
上記でも述べましたが、大きな事故時には被害者側も穏やかには済ますことができませんので、ご本人ならびに勤務先をも連名で賠償請求せざるを得ません。
裁判は常に“弱者救済”が原則。高額判例が下され従業員に賠償能力が無ければ、被害者は速やかに救済されなければなりませんので、一旦は財力のある勤務先に支払い命令が下されます。
この様になると、会社の経営存続の危機にもなりかねません。
動力を持たない自転車は素晴らしい乗り物ですが、一歩間違えれば走る凶器にもなってしまいます。
自治体が「自転車保険」加入を義務付けているところも多くなりましたが、保険加入は自転車マナーのひとつではないでしょうか。
■従業員の「自転車通勤事故」が企業の新たなリスクに!
https://sr-ihara.com/column/romu002/
■通勤中の事故と会社の責任
https://kagoshima-kotsujiko.com/2021/07/08/articles-17-09-25/
株式会社遠井保険事務所
遠井洋文・責任編集 ▲