第12話 賠償保険の落とし穴

マイカーをお持ちの方でしたら、任意保険に加入していらっしゃるはずです。
対人賠償は無制限、対物賠償も無制限と、万全の契約内容ではないでしょうか。

外部(対人や対物)への賠償保険は無制限補償を申込まれていますが、大切な家族や勤務先の同僚に対して任意保険は思うように機能するのでしょうか。

1.家族への対人賠償ならびに対物賠償、任意保険では免責(無効)

運転手が所有管理するクルマを運転し、被害者が運転者の家族だった場合、任意保険による賠償は免責になります。

  • 例1)母を駅前までクルマで送るために車庫から出庫していた際、母が横切り、慌てて運転操作を間違え轢いてしまった。
  • 例2)子供が免許を取得。上達するまで練習用の車を用意。しかし、早速乗り込むとイキナリ父親のクルマに追突してしまう。

【家庭用自動車保険約款より(東京海上日動社参照)】

・保険金をお支払いしない主な場合 対人賠償・対物賠償
ご契約のお車を運転中の方の父母・配偶者または子にケガをさせたり、これらの所有、使用または管理する財物を壊したことにより、補償を受けられる方が被った損害。

【なぜ免責?(保険毎日新聞社発行『自動車保険の解説2017』参照)】

賠償責任とは、親子、夫婦という密接な関係にある、いわば、経済的共同体内部では、一般に損害賠償請求は行われないというのが社会通念であり、約款はこれに併せて免責と定めたものである。

2.業務中、同僚への対人賠償ならびに対物賠償も免責(無効)

  • 例3)引越し専門運送会社のドライバーBさん。いつものスタッフを従えて隣町までお引越し。
    無事作業を終えて帰社する途中、疲れからか居眠り運転で深刻な追突事故を起こしてしまいました。
    本人はもとより、助手席のスタッフ2名にも重軽傷を負わせてしまいます。
    しかし、任意保険の対人賠償は免責により機能しません。
    これを“同僚災害”などと呼ばれていますが、自賠責は有効です。
  • 例4)明朝の出庫が早い為、担当車両の位置を変更しようと、不慣れな大型車両を移動させようとして、会社倉庫の軒を壊してしまった。

【業務用自動車保険約款より(東京海上日動社参照)】

・保険金をお支払いしない場合 賠償責任条項
当会社は、対人事故により下表のいずれかに該当する者の生命または身体が害された場合には、それによって被保険者が被る損害に対しては、保険金を支払いません。
※下表 被保険者(会社)、被保険者の業務に従事中の他の使用人。

【なぜ免責?(筆者の推測)】

意図的な偽装事故が混在することも考えられます。

  • 例5)「このエアコン、調子悪いからトラックぶつけてしまおうか…」
    そういったモラル的な危険を排除するために、免責としていると思われます。

※家族間では対人賠償は出ない!?(ご参照)
https://secure01.red.shared-server.net/www.toshi-office.com/jiko-14-31mensekihakobetu.htm

株式会社遠井保険事務所
遠井洋文・責任編集 ▲