第3話 監督責任とは
先月は、本人だけに限らず家族全員が保険の対象になる。と解説しました。
(家族全員の定義は、先月号をご参照ください)
しかし、成人した子供の賠償責任を親の加入している保険で補償することには疑問を感じないでしょうか。
いいえ、この保険に限っては“同居(※1)”さえしていれば、補償対象になります。
サザエさん一家の波平さんが契約者であれば、サザエさんもマスオさんも補償対象になります。
さて今月のタイトル監督責任とは、法律用語の「監督義務者の責任(※2)」ことを意味します。
皆さんは、親が起こした賠償責任事故について、子供が責任をとる義務があることは意識したことがあるでしょうか。
我が親への監督責任
皆さまから弊社に寄せられる相談の中に以下のような例があります。
- 例1)認知症で介護施設に入所している父が、同じ施設利用者に暴行を働きケガを負わせてしまった。
- 例2)認知症の母が徘徊し踏切に進入。通勤電車を急停車させて混乱させてしまう。
- 例3)長期入院の為、無人化した実家の庭木が倒れ、隣家のクルマを傷つけた。
これらの事例は、すべて同居していませんので、此処までの解説からすると補償されないことになりそうですが、補償される場合があるのです。
回答から先にお話ししますと、この様になります。
- 例1)◎対象になります。
- 例2)◎対象になります。
- 例3)×対象になりません。
例1と例2で共通することは、おふたりとも認知症であることが医学的に診断されていること。 よってご本人には賠償義務が無く、監督責任者である“相続人全員”に賠償義務があり、個人賠償責任保険は有効に働きます。 (この紙面では、相続人の定義などについては割愛させていただきます)
ここでご注意いただきたいことは、相続人が一人ではない場合には賠償金は相続人全員で分担することになります。
また、この約款は保険会社によって異なります。
弊社調べで、この様に支払われる保険会社は2022年3月の段階では「東海日動、三井住友海上、あいおい損保、AIG損保」の4社だけですので、ご自身の保険を良くご確認ください。
例3では、入院の理由が病気であり、認知症状はないためご本人自身が保険加入する必要がありました。
※1 同居:この保険において同居の定義は「同一家屋に居住」していることで、同一建物内で居住区分がなく日常生活を営んでいる状態を言えます。
※2 監督義務者の責任 wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%A3%E7%9D%A3%E7%BE%A9%E5%8B%99%E8%80%85%E3%81%AE%E8%B2%AC%E4%BB%BB
株式会社遠井保険事務所
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