第5話 業務上の賠償保険

第2話で個人賠償責任保険について、基本的な範囲でご説明してきました。
今月は“私生活”ではなく、“業務上”での賠償責任保険についてお話しさせていただきます。

1.業務上の賠償保険とは

専門的職業である医者、弁護士、税理士、司法書士などには、専用の業務上賠償保険があり、建築会社では建築中の事故や建築後の責任(PL)が必要で、日々の生活に身近な食品メーカーや各種飲食店にも大小違わず業務上賠償保険があります。

自動車保険でも、人や荷物を“有料で運ぶ”運送業は、ナンバープレートが緑色や黒色で見分けられ、保険料も一般の乗用車に比べると随分と高く設定されています。

最近流行りの“飲食お届けサービス”もバイクで届ける場合には緑ナンバーが必要(125cc以上)になります。

この考え方は、自転車においても同じであり飲食を“有料で運ぶ”場合には立派な運送業に該当します。

2.“私生活”なのか“業務上”なのか

社会問題にもなっており、筆者も大変気になっている“飲食お届けサービス(以後、飲食届と略す)”。

調べてみますと、雇用形態はさまざまで「勤務」と「請負」に分かれています。

「勤務」の場合には“私生活”と“業務上”が明確に分けられます。
“業務上”にてお客様や第三者に賠償事故を起こしてしまえば雇用者が賠償義務を負い、労災も適用され安心です。

かたや「請負」契約は“私生活”なのか“業務上”なのか、明確に線引きできにくい。

よってどちらの時間帯でも賠償できるように保険加入しておく必要があります。

一般的に自転車保険として販売されている保険では“私生活”のみ補償対象とされているので、飲食届の賠償事故は“業務上”になり“業務上”用の保険で賠償することになります。

  • 例1)
    【起床--通学--下校--飲食届待機中--飲食届配達開始★★★飲食届完了--帰宅】
    「--」部分は“私生活”なので、自転車保険は有効ですが、「★★★」部分になりますと“業務上”なので施設賠償保険が必要になります。

3.ボランティア(無償)でも賠償責任は追及される

  • 例2)
    少年サッカーチームの遠征試合にバスの運転を好意で(無償で)担当したが…
    ●ドアロックかけず小学5年転落死 「逮捕はおかしい」との声
    https://www.j-cast.com/2007/12/26015054.html?p=all
  • 例3)
    「名義だけでも」と、ある団体の理事と嘱望され無償で在席していたが…
    ●理事になると何か責任を負いますか、友達に頼まれて名前を貸しただけの場合は
    https://npolawnet.com/qa/

たとえ完璧な保険に加入していても、法律違反していると保険が免責になる場合があります。
自転車で逆走したり、無灯火で走行したりしないように交通ルールは守りましょう。

株式会社遠井保険事務所
遠井洋文・責任編集 ▲