第6話 被害者の立場で考える
今月は賠償事故について、被害者の立場で考えてみました。
1.隣家から出火し、わが家にも類焼してしまった
この場合、当然隣家に賠償請求をしたい気持ちもあるかもしれません。
しかし残念ながら、わが国独自の法律“失火責任法(失火法と略す)”があり、出火元に重過失でも無い限り賠償しなくても良い。とされています。
よって自宅財産はご自身の火災保険等にて守らなければなりません。
この法則は、集合住宅・マンションにおいても同じです。
10階から出火し消火活動が行われ、9階から1階には大量の水被害が。
こちらも火災が原因ですので、失火法が成立し賠償義務は逃れられます。
2.赤信号で停車中、後続車に追突される
1)加害者が無保険
追突された車の運転手に過失が認められない場合、当然後続車運転手には、全面的に賠償する義務が生じます。
いわゆる0対100の事故ですね。
ところが加害者が任意保険に未加入・保険料未払いで保険失効中の場合、示談交渉は速やかに進まなくなります。
更に、被害者が加入している任意保険も出番がありません。
100%被害事故においては示談交渉できない法律になっているからです。
(ただし最近は弁護士特約が発売され、被害事故にも対応可能に)
2)加害者が逃亡
更に加害車両は盗難車で加害者は現場から逃亡など。
賠償が成されないことになってしまったらどうしますか。
3)怪我などの治療費は
加害者による治療費支払いが成されない場合には、被害者が全額支払わなければなりません。
その場合
- ア.健康保険や労災保険(勤務中通勤中)が利用できます。
- イ.“自動車損害賠償責任保険(自賠責と略す)”の被害者請求が利用可。
- ウ.国の制度により“政府保障事業(*1)”が利用できます。
- エ.自車で“人身傷害保険(以後人傷と略す)”に加入しておく。
ただし上記イとウでは、治療費は120万円までが限度額となります。
大事なご家族や社員の為にも“人傷”への加入を強くお勧めします。
4)車両の損害について
ご自身で、車両保険に加入しておけば、修理代はもちろん、代車代金なども補償されます。
その後、加害者には保険会社から求償されます。
5)下記を紙面の都合上割愛させていただきました
- 死亡・後遺障害・休業損害・慰謝料について。
- 車検切れ、自賠責切れの場合。
3.エレベーターから降りようとしたが、突然箱が急上昇し挟まれる
この場合、加害者として考えられる立場の方は、
- 1)建物の所有使用管理者
- 2)エレベーター保守点検業者
- 3)エレベーター製造会社
等になります。
上記1)、2)には、建築基準法違反や債務不履行が考えられ、上記3)においては“製造物責任法(PL法と略す)”が該当します。
ひと昔前ですと、因果関係・欠陥・過失の3要件が満たされないとメーカーに対して訴訟を起こすことはできませんでしたが、現在はPL法が施行され、被害を受けた事実(因果関係)と製品の欠陥が証明できれば訴訟が可能になりました。
PL法の最大メリットは、被害者救済のために迅速な裁判~判決により、速やかに賠償が成されることです。
よって、上記の3社どちらに主たる原因や責任が存在したかは、3社の企業間訴訟で別の裁判にて争ってもらう事になります。
(*1)政府保証事業
https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/info/qa/security/answer12.html
株式会社遠井保険事務所
遠井洋文・責任編集 ▲